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History

常温核融合のあゆみ

序章 〜
20世紀最大の発見
またはスキャンダル、
常温核融合

世界は、常温核融合と出会う

常温核融合が世界にセンセーションを巻き起こしたのは、1989年3月。重水(重水素でできた水)を満たしたガラス容器にパラジウムとプラチナの電極を入れて電気分解を行うと発生する過剰な熱として、イギリスのフライシュマン博士とアメリカのポンズ博士によって発見されました。
しかし、その後各国で行われた追試験での再現性は極めて低く、この発見は20世紀最大の科学スキャンダルとして「似非科学」のレッテルを貼られてしまいます。

中性子線観測
世界初の快挙の果てに

自らの研究過程で同様の発熱を体験していた水野は、フライシュマンとポンズの発見を検証すべく研究を開始します。3ヵ月後の1989年6月、重水を電気分解する際、D-D反応(重水素同士の核融合反応)に特徴的な、2.45MeVもの中性子線の観測に成功。これは、電気分解によって核反応が起きるというフライシュマンとポンズの発見を実証する、世界初の快挙でした。

しかし、世界中のマスメディアの熱狂的な否定により「似非科学」のレッテルを貼られた常温核融合は、既に容易には正当な評価を得ることのできないポジションに追いやられていました。
水野は中性子線の検出という世界的な快挙を果たしながら、実に30年以上にわたり常温核融合とともに茨の道を歩むこととなります。それは、長い冬の始まりでした。

入力を超える大出力の
実現を目指して

電気分解から、
金属結晶内核反応へ

重水の電気分解によって起きる核融合反応は極めて微弱です。キロワット(kW)レベルの熱または電力の出力を目指すため、水野は研究の方向を、液体水溶液の電気分解から水素感受性金属を活用した核反応の実現へとシフトします。即ち、金属結晶内核反応、研究畑では凝集体内核反応と呼ばれるものです。

入力を超える熱出力に成功

この方向転換は功を奏しました。
水素感受性金属結晶を蒸着メッキ方式と同様の放電蒸着技術でナノ粒子化し、その内部で核融合反応が起きないか実験を重ねた結果、パラジウムのナノ粒子を蒸着したニッケルメッシュを使用することで、投入した電力に対し1.25倍レベルの熱出力を得ることに成功したのです。この経緯は、水野が2017年に発表した論文で詳しく述べています。

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